火星人は見た「そんな雰囲気」の嵐を/ただのみきや
 
ビ応挙=おうきょ}を模した掛軸を揺らすくらいはできようか
香炉転げて首もげて

障子越しの影絵芝居
アメノウズメが踊るのは
岩戸であって黄泉路ではなく
隔てられてもありありと

気狂い家族と呼ばれても
仲睦まじく暮らしていた
朝顔屋敷と名付けられた
謂れを失くした伝承のように

朝と夜が抱き合ったまま坂を転げ
嘘と誠がすっかり溶け合った
自分も他人も生者も死者も
その時々の区別でしかないくせに

ある夜旦那が化けた
剣山に散った花びら
女房の裸はあまりに白く
山奥の社まで続いていた

月は去り 子はひとり
しばし淡くひかりを宿したまま
虚空にかかっ
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