火星人は見た「そんな雰囲気」の嵐を/ただのみきや
かった蜘蛛の巣に
いのちのふるえを待っている
*応挙=円山応挙 江戸中期から後期の画家
ただひとつの詩が輪廻を繰り返す
いくつもの架空曲線で編み上げられ
なおも定まらず
消しゴムでこするように
はじめから喪失として描き出された
非在の裸婦像
ウイスキーの蓋を開けるように
秘密の首をねじ切った
風が泳いでいた
ひらいた途端に溺れてしまう
脳を焼くつめたい青
崩落し続ける光の伽藍
猿轡(さるぐつわ)を噛まされたまま眼差しで斬りつける
いくつもの疑いを試着しながら
底なしへと踏み外す記号の肢体
《2022年10月9日》
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