ない夏/山犬切
 
悪く言葉という差異を紡ぐ
それはちょっとした呪詛であり抵抗 それは決してうたにならない言葉 それは砕けた剣のように鈍く光る おのこのおりもの
待ち人が来ないのはわかっている 三カ所に窓のついた 水に奇妙な縁のある部屋 そこでエチカをそだてる それがすべきことなのだろうか
貝は永遠に貝殻から離れず決して旅にでることはないのか

夏の日差しを浴びる ほこりっぽいガードレールの道を歩いていたら
子供の頃こんな道を風を切って自転車を漕いでいたな とふと童心にかえりおもった
燦然と光る緑のいちょう並木の通りを網も持たず歩く
のっぺりした暮らしが続く状況で 俺はぼそぼそと啜り泣くように言葉を紡
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