ない夏/山犬切
二次元のようにいやにリアルに迫る夏空の下
虫取り網を肩に担いだ子供がほこりっぽい辻道を森へと向かった
働く人がいて 働かない人がいて 不明瞭な領域にぞくすやつらもおおぜいいて
この夏大人になった人もいれば ガキのまんまの奴もいるし
それぞれ秘密を蔵している きらきら光るプールサイドの火薬庫のような胸の中に
じっとりと暑い夜 鰻丼を作って食べた
クラクションが少し聞こえる 壁が内と外を隔てる居間
食卓の斜め上で少しメタフィジカルに俺は考えた
友情も恋愛も仕事も全てはメリット…所詮はメリットの多寡で決まるじゃないか 毎日思い知る運ゲーと育てゲーと無理ゲーとで俺の心と体はいっぱいだ
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