時と町/山犬切
白昼 午後の3時間目の授業がはじまっている 俺は何故か昼休みに見た、原発事故の起きた福島の、防護服を着た作業員が晴れた真昼間にカメラに向かって謎のサインを発しているyoutubeの動画を脳裡に浮かべていた あれはどういうサインだったんだろう 5時間目の美術は石膏で人物の彫刻を作るというものだった 僕はギリシャ人の精悍な彫刻を作る気にもアジア系の彫りの浅い、美しいとは手放しでは言えない顔立ちを作ることにも踏み切れないでいた 授業が終わり簡単に雨が上がってしっとりと濡れた校庭を踏みしめていった 石造りの水道の蛇口のあたりに小さな虹ができていて前を行く背の高い制服の似合う美男が虹の前を何の抵抗もなく通り
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