時と町/山犬切
 
通り過ぎた 俺は虹にしばらく気を取られていた やがて平静に戻り自販機でドクターペッパーを買って飲むと校庭の園生で可憐な紫の花が咲いていた 家に帰り夕方の食膳に向かう時にもあの白昼の福島の原発作業員のサインが頭をよぎって気になった でも十秒間ほどすれば葱のかかった冷奴や味噌汁を食べることで無心になっていた 町の時間は過ぎていった どういうふうに過ぎていったか 様々な果物の入ったミキサーを回転させてそれらを刃がどろどろに切り裂いていき、緑色のスムージーが作られるように、そんなふうに町の時は過ぎ季節がまわった 奏でることも響くこともなく時は過ぎ 僕は学校を卒業した
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