詩の日めくり 二〇二〇年二月一日─三十一日/田中宏輔
、その青年は二十歳そこそこだったように記憶している。ぼくは勇気がない。その子がぼくのことをフードコートで見つめてきた時点で、ぼくがアクションしなければならなかったのだ。大事なところでチャンスを失ってしまう。ぼくの悪いところだ。勇気がない、臆病なせいだ。相手の子がプロかもしれないと、ちらと思ったことが原因だった。プロというのは、相手がゲイだとわかったら、金銭を要求してくる連中のことだ。ぼくも一度、プロに引っかかって、15万円、とられたことがある。貯金を銀行でおろさせられたのである。苦い経験だった。その子がプロかどうかはわからなかったけれど、危険な香りはしていた。愛嬌はなかったけれど、ぼくにはかわいい
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