詩の日めくり 二〇二〇年二月一日─三十一日/田中宏輔
 
かなって思う。


二〇二〇年二月十九日 「小野知子ちゃん」


 記憶って不思議だな。小学生のときにマンガクラブに入ってたんだけど、クラブといっても4、5人のグループだったんだけど、そこに小野知子という名前の女の子がいた。好きでもなんでもなくって、ただ名前を憶えているだけど。かわいくも、なんともなくって、ただ利発な子だったことだけは憶えている。名字から名前まで憶えている女の子はその子くらいだ。名字だけ憶えている女の子は何人かいるのだけれど。ぼくは小学校の卒業写真も、名簿も持っていない。持っていないといえば、中学校のも、高校のも、大学のも、卒業写真や名簿を持っていない。みんな捨てたのだ
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