詩の日めくり 二〇一九年七月一日─三十一日/田中宏輔
 
での人生でもっともうつくしい「す」
であったことに感動し、職員室で、宗教学の先生に、それを見てもらった。
「田中先生、字、ふだんから、きれいですよ。」と言われたのだが
その「す」は、ぼくがこれまでに自分の書いた「す」で
もっともうつくしかったのだ。
記念にとっておいて、書き換えたものを提出すればよかった。

アルバイト先の塾で、「先生、ぼくのしゃべり方になってる。」
と生徒に言われた。
人格の転移が容易になっているようだ。
気がつくと、ふだんの自分ではなかった。
生徒そっくりのしゃべり方をしていたのだった。
これも、躁状態のはっきりした兆しである。
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