記号を嗅ぐ/ただのみきや
 
れた紐の鳴らない鈴の輝きが
胸元にころがる冷たい朝に
造花のような沈黙は結露した
すでにないものが
カンバス深く埋まっている
ぎこちなく愛し合った
兎の眼から滲む赤
鍵の開かないまま
くべられる絵具の声





その言葉は

「所詮はそれだけのこと」から
「それだけじゃないさ」という
現実を掬い取る価値基準に不動の尺度なんてなく
少々曖昧でも風通しの良い隙間や逃げ道があって
自分がはみ出しても他人がはみ出しても
「それもありか」と自然体で眺められるような
運動とか思想とかましてや時代の流れなどではなく
他者の言動を見張ることでもなく
それは眼
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