最後の一艘/ホロウ・シカエルボク
かして窓の外を見た、でかい樹の枝がバイキングの料理の乗った皿を持ってくるウェイターの腕のように緑を満載してこちらに伸びていた、無人島だ、と思った、無人島って?と誰かに問いかけられ、振り向くと最初に目覚めたときに俺を見下ろしていた看護師が立っていた、俺はなんでもない、というように首を振って見せた、看護師ははいはい、という感じで頷いた、「お話出来るようになったの?」練習だ、と答えた、実際、久しぶりに聞いた自分の声は細く、擦れていて弱かった、無人島か、と看護師はなんだかそれに感じることがあったみたいに繰り返した、WWEの女子レスラーに似ていた、それからは一日に数分、彼女は俺と話をするようになった、お互い
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