最後の一艘/ホロウ・シカエルボク
 
はどうですかな、と医師は俺に問いかけた、喉を指さして上手く声が出せないというゼスチャーをすると頷いて現在の状態とこれからの治療の方針について説明してくれた、きちんと整理されたいい説明だった、説明が終わるとこちらをじっと見た、頷いて理解した旨を知らせると満足した様子で去って行った、なにか説教臭いことのひとつも言われるかと思っていたが、そんなことはなかった、喋れない相手にそういうことを投げつけるのは面白みがないからかもしれない、それから数日は液体の飯を点滴で食わされた、病室は静かで、適温に設定された空調のせいで快適だった、こんな世界があるんだなと思った、そういえば入院などしたことがなかった、首を動かし
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