最後の一艘/ホロウ・シカエルボク
に向かって叫んでいた、大丈夫か、しっかりしろ―大丈夫なわけないだろう、それははたで見ているあんたらのほうがずっと確信しているはずだ、救急車がどうのこうのと数人が叫んでいてほどなくサイレンが聞こえた、誰も居ないところを選んだと思っていたのにこいつらいったいどこから出てきたんだろうな、そういえば、耳は生き残ってるんだな、人生で一番音が良く聞こえてる気がする、たくさんの足音、怒号…なんでそんなに必死になっているんだい、お前らが普段得意になって吹聴してるスノッブな態度はどこへ行ったんだい、ギッ、ギッ…と、脳味噌の中でいくつかの扉が閉じられた、痛みや苦しみ、あらゆる感覚がなにかぼんやりした、曖昧なものへと変
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