詩の日めくり 二〇一九年一月一日─三十一日/田中宏輔
りをしていた。そんな光景は、いまは、どこにもない。子どもたちの姿さえ、どこにも見当たらないのだった。訪れるのは、わたしのような役人か、政府関係者か、切腹を見にやってくる外国人くらいのものであった。戦後になって、首都が東京から京都になり、切腹会場が東京から京都に移されて、建仁寺の境内の様子が様変わりしたのであった。ズズッという音がしたので振り返った。ホムンクルスが串刺しになった。わたしは立ち上がって、男の顔を見た。男はいやしい身なりの霊体狩りで、齢はわたしと同じくらいか、少し上であったろうか。「ここは聖なる霊場である。ここでホムンクルスを獲ることは禁止されておるはず。」男は少しもひるまず、こう答えた
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