詩の日めくり 二〇一九年一月一日─三十一日/田中宏輔
 
の惑星か忘れたけど
バスが急停車した
ぼくは思わず卵をぎゅっと握りつぶしてしまった
卵の殻のしたに小さな人間の姿が現われた
つぎの停留所がぼくの降りなければならない停留所だった
ぼくは殻ごとその小人を隣の座席の上に残して立ち上がった
その小人の顔は怖くて見なかった
きみは卵だろう
知らないおじさんの低い声が耳に残っていたから
降りる前に一度けつまずいた
ぼくは、一度も振り返らなかった


二〇一九年一月二十四日 「テーブルの上に残された最後の一個の卵の話」


透明なプラスティックケースのなかに残された
最後の一個の卵が汗をびっしょりかいてい
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