ただ在る、とあなたは言った ?/帆場蔵人
とも知れない旅路につく。誰かに生まれ変わるには十分な時間があったけれど、男はその旅が終わるまで待つことにした。人生のおさらいをしながら言わなかった事ばかりを思った。その背を早送りしていくとナメクジはやがてひかりに変わり、雌雄のないそれは天使のようであった。男の魂はそれを見送り背を向けた。男の骨だけが地に残されて、とある学校で骨格標本として余生を過ごしていた。ある日、それを見上げて、これはぼくのほね、と少女が呟いたと風たちが噂する。川は流れるみずとみずからの境い目に想いを馳せる日もあった。遠いむかし、焼かれたものたちの灰が自分を流れた。その名前も性別も川には知りようがなかった。映っていたのは送り出す
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)