ただ在る、とあなたは言った ?/帆場蔵人
 
出すひとびとだけであった。そのころナメクジはどう呼ばれていただろうか? 問いかけばかりが人生なのか、通りすがりの子が川面にむけてじゃがりこ、と吐いて去っていった。いつかすべてが流れ去り枯れた川が残されたとしたら、それはかわのほねだろうか。そのとき海もほねになっているのか。そのとき、そのとき、そのとき……

あれは、誰の末節骨がとけた、あさのひかりか
よるに名前を問うてみる、男は否、と言った
誰でもない、と水面にはすべて映っている

あれはわたしたちだれのほねでもある
わたしたちがほねなのだからひかれる
つかのまとりたちがやすむかわもきも
わたしたちがあるくみちもまちもだね

誰かが愛して、憎んで掻きむしる世界という膚えに
包まれた骨、川に投げた石がみなそこへ、と沈んで
ぷかり、とかわりにうかんだがみるものはなかった

だれかがいつか骨格標本をつくるときに
こんなことは全く考えずに愛だよ、愛と
いうのだろう、それはそれで仕方ないさ

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