指さす先になにもない/ただのみきや
 
 乾燥した儀式の吸音
        女の吐き戻した童話から起き上がった戦死者の群れ
        永久凍土の薔薇
        こうしてまた思想は春をひさぐ


死の輪郭を唇で推し測る
旅――メロディアスな言葉への瓦解
古代の戯画が虹を叫ぶ
付箋のように 目隠しのように
延々と続いた不妊の儀式
小鳥のつくろい 煙の仕草
帽子を目深に被ったまま
男の笑いは地図の空白を長くさまよっていた
未完のまま放流される歌の稚魚たち
裳裾の捲れたオフィーリア
視神経を遡上する針の巡礼


        少女の起立する青いマグマ
        青いザクロ 青いアワビ
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