指さす先になにもない/ただのみきや
 
性――バクテリアである
たとえるなら
《朝食――海から生まれた林檎
群れる鴎を追うように
天から巨大な手が伸びて来て
ひとりの少女に凍りつく――時間》
     ということとよく似た他人


        もてあますのは感情でも欲望でもなく
        剥離し続けるクロッキー
        空に焼べられるハミング
        静物の陰
        万華鏡の底へと突き落とされた
        盲人の雲に包まれた片目から発芽する
        踊り子たちの無言の剣幕
        朝ベッドは座礁する


頸動脈に押し当てた強いSの発音
陽気
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