玉手箱/ただのみきや
 
忍路・蘭島

翡翠と書いてカワセミと読む
そんな宝石が飛び去る刹那の後姿を
有難い気持ちで見送った

3500年前の環状列石は
見かけも手触りもありふれた石
そりゃあそうだろう

海の家は閉まり
穏やかな諦念 砂浜は
波のいいように身を任せている

散漫にサラサラ仕事をこなし
早めに引き上げる
縄文の恋人をひとり連れて






失語楽園

わたしは言葉を失っている
そう 書くことはできる
事実わたしは言葉を失くしているが
言葉を失くしたわたしを言葉で描写することはできる
言葉を失くしてそうなったのか
いや 初めからそうだ
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