玉手箱/ただのみきや
だ
自分の言葉など全く知らない見当たらない
すでにある言葉を夢中でかき集めては
バラして並べて積み上げる見栄えを気にしながら
だが 言葉は機能する
見えないパペットを操るように だ
一個の魂のまわりに宇宙が形成される
子宮があって
ゆり籠があって
棺桶もこさえてある が
いつまでも生まれないし存在しない
不在を恥部として
よさげな無花果の葉で覆っている
わたしが抱いてあやしているわたしの魂 それは
産着に包まれた夜の欠片
浦島
きみはモダンな仏壇のよう
指先を凍傷で染めながら胸の留め金を外すと
なま臭い蟹籠の向こうから吹いて来る
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