ネジ/草野大悟2
時の目の前にいる君は、ぷにゅぷにゅとした透明の物が湧きでるうす水色のゾルに棲む、さくら色をした極小の存在だった。
俺は、君だけが自分の意志で安眠できる空間を提供するだけの場所にしかすぎなかった。
君の食事の様は、その日、いつにもまして凶暴だったことを俺は知っている。
君は、全身を口にして相手に襲いかかり、相手がどんなに泣き叫ぼうが、命乞いをしようが、なんの躊躇いもなく咬みちぎった。
相手の悲鳴が青白い血とともに、うす水色のゾルの中をゆっくりと昇ってゆく。
その様は、ある意味、荘厳ですらある。
放心したように見つめる君は、まるでゲノムから見放され、宇宙に放り出されてし
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)