詩の日めくり 二〇一七年六月一日─三十一日/田中宏輔
 
ど、ポールが一瞬のあいだも見逃さないようにステージを見つめてたとこに、なんだか、こころにぐっとくるものがあった。音楽で食べてるひとたちもいる。あきらめたひとたちもいる。ぼくも結局、詩集を出すのに1500万円くらいかけたけれど、1円も手にしていない。ほんとうに趣味なのだ。しかも、これからさきも死ぬまで1円も手にしないだろう。永遠のシロートである。しかし、詩人はそんなものであってもよいと思っている。むしろお金を儲けない方がよいとすら思っている。ほかにきちんと仕事を持っているほうが健全だと思っている。賞にもいっさい応募しないので、だれにおもねることもない。献本もしないので、ぼくの詩集を持っているひとは、
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