火炙りの朝/ホロウ・シカエルボク
 
だというのなら
これは現実ではない
けれど、細胞の隅々まで汚染するかのような
この痛みは、怖気は、
リアル以外にどんな呼称も思わせはしない
ひとつの乱れのあと、繰り返される同じビート

緊張を解くように首を動かすと
椎間板の辺りで肉を潰すような音がする
枕元に転がっている昨日の遺言
もはや判読出来るような代物ではなかった
灯りを点ければここから逃れることは出来るけど
どうしてもそうすることは出来なかった

清潔な腐乱死体の
死後硬直が起こす振動
シーツは地震計のように
それを記録する
例えばそれを文字に変換したとしたなら
いま俺が一番話したい言葉になるだろう
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