詩の日めくり 二〇一七年四月一日─三十一日/田中宏輔
ぬれて光る唇。漆戸棚のやうな黒光りする頑丈な胃。鉄のやうなはらわた。よく締まつた肛門。
さあ。もつてらつしやい。なんでもたべるわ。花でも、葉でも、虫でも、サラダでも、牛でも、らくだでも、男たちでも、あしたにならないうちに、みんな消化して、ふというんこにしておし出してしまふから。
そんな女に僕は、ときどき路傍ですれちがふんだが。
金子光晴 「短章(二十三篇から)」W
冒頭もなく、終もなく、人生はどの頁をひらいてみても人生であるやうに
僕らはいつも、路の途中か、考の途中にゐる。
一人の友としんみり話すまもないうちに生涯は終りさうだ。
そののこり惜しさだけが霧や、こだ
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