詩の日めくり 二〇一七年四月一日─三十一日/田中宏輔
 
数なのか。
きのうの君ははたして、きょうの君か。
いつともしらず、刻々に蒸発して
君の若さは、交代してしまう。


金子光晴 「短詩(三篇)」B

 人間がゐなくなつて、
第一に困るのは、神様と虱だ。
さて、僕がゐなくなるとして、
惜しいのは、この舌で、
なめられなくなることだ。

 あのビンもずゐぶん可愛がつて、
口から尻までなめてやつたが、
閉口したことは、ビン奴、
おしゃべりで、七十年間、
つまらぬことをしゃべり通しだ。


金子光晴 「短詩(三篇)」C

 そして、僕はしじんになった。
学問があひてにしてくれないので。
ビンに結んだ名札を僕
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