詩の日めくり 二〇一七年四月一日─三十一日/田中宏輔
 



金子光晴 「太陽」

濡れた舌で、草つ葉が、僕の手をなめる。
……土管と、塀が、一つところに息をあつめる。
暗渠のなかでころがり廻る白髯の太陽の
居どころをしつてゐるのは、僕より他にない。


金子光晴 若葉よ来年は海へゆかう」

海からあがってきたきれいな貝たちが、若葉をとりまくと、
若葉も、貝になってあそぶ。


金子光晴 「愛情」8

 なにを申しても、もう
太真はゐない。

 あのお尻からもれる
疳高いおならを、

 一つ、二つ、三つ、四つと
そばで数取りしてゐた頃の

万歳爺々(くわうてい)のしあわせは
四百余州もか
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