詩の日めくり 二〇一七年四月一日─三十一日/田中宏輔
 

日本では、みたことがない。


金子光晴 「くらげの唄」

僕? 僕とはね、
からっぽのことなのさ。
からっぽが波にゆられ、
また、波にゆりかへされ。


金子光晴 「ある序曲」

すでに、僕らは孤独でさへありえない。死ぬまで生きつづけなければならない。ごろごろいっしょに。
そして、真似なければならない。することも考へることも、誰かにそつくりゆずりわたすために。


金子光晴 「太陽」

濡れた舌で、草つ葉が、僕の手をなめる
……土管と、塀が、一つところに息をあつめる。
暗渠のなかでころがり廻る白髯の太陽の
居どころをしつてゐるのは、僕より他にない。
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