詩の日めくり 二〇一七年四月一日─三十一日/田中宏輔
 
が月のあかるさにみちてゐた。


金子光晴 「子供の徴兵検査の日に」

身辺がおし流されて、いつのまにか
おもひもかけないところにじぶんがゐる


金子光晴 「女たちのエレジー」

(…)釦穴にさした一輪。あの女たちの黒い皺。黒い肛門。


金子光晴 「女の顔の横っちょに書いてある詩」

三十年後のいまも猶僕は
顔をまっ赤にして途(と)惑(まど)ふ。
そのときの言訳のことばが
いまだにみつからないので。


金子光晴 「[戦争が終ったその日から]」

ぱんぱんはそばの誰彼を
食ってしまひさうな欠伸をする。
この欠伸ほどふかい穴を

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