詩の日めくり 二〇一七年四月一日─三十一日/田中宏輔
 
そこのそこからはるばると、あがってくるものを待ってゐた。


金子光晴 「どぶ」一

━━女ぢゃねえ。いや人間でもねえ。あれは、糞壺なんだ。


金子光晴 「あけがたの歌」序詩 一

 どつかへ逃れてゆかうとさまよふ。
 僕も、僕のつれあるいてゐる影も、ゆくところがない。


金子光晴 「落下傘」一

おちこんでゆくこの速さは
なにごとだ。
なんのあやまちだ。


金子光晴 「寂しさの歌」三

僕らの命がお互ひに僕らのものでない空無からも、なんと大きな寂しさがふきあげ、天までふきなびいてゐることか。


金子光晴 「蛾」一

月はない。だが月
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