詩の日めくり 二〇一七年四月一日─三十一日/田中宏輔
 
の瞬間を。


金子光晴 「航海」

彼女の赤い臀(しり)の穴のにほひを私は嗅ぎ
前(ぜん)檣(しやう)トップで、油汗にひたつてゐた。


金子光晴 「南の女におくる」

人は、どんな小さな記憶でも、?んでゐるわけにゆかない。


金子光晴 「夜の酒場で」

ながれ汚水。だが、どこかへうごいてゐないものはない。私はひとり、頬杖をついて、


金子光晴 「おっとせい」二

(…)やつらは、みるまに放尿の泡(あぶく)で、海水をにごしていった。


金子光晴 「泡」三

(…)らんかんにのって辷りながら、おいらは、くらやみのそこ
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