放浪者と廻者/帆場蔵人
 
呼べ砂に傾いた灯台の群れよ
 
廻者(ヴク)は砂と空へ歌を捧げる、海をしらぬひとびと
無数の砂丘は墓であった、諦めのうえに降る砂漠の海
骨組まれていたものが、額縁からはみだしてはぐれ

回転する鳥たちを詠みあげヴクは琴の
弦に変えていく捻られひきしまる歌声
継がれる火と遠くに在った火の名残り

鎮まれと、痛みも悲しみも怒りも、やがて風化する

立てかけられた 
 梯子どこにもとどかず
  人魚はのぼる足もない

 汀、汀、汀、去りし海を呼べ砂に傾いた灯台の群れよ

翆、と呼ばれるその楽器は、翠ともいうらしいのだ
奏者の性別によって変わるのだという、かわせみ、が
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