居酒屋にて/帆場蔵人
 
なんてそんなもんや

カラス除けのビニールが、パラパラ
畑の夜を叩いて、地面に顔出しとる
キャベツが黙ってこっちをみとった

なぁ、お前らも世間なんてそんなもんや思うやろ
狩られて出荷されて喰われるだけ、ひとつぐらい
俺がもうて何が悪いんや、何しても変わらへん

キャベツの首をひとつ、ふたつ狩り、みっつ目を
手にして顔を上げたときにな、菜の花がみえた
菜の花は綺麗やなぁ、蝶々がようさん、俺も
あんなかの一匹やったかもしれん、いまや
蛾やけどな、一匹逸れて、我をはってな

空を飛べたんはいつの事やったやろなぁ
蛾がぱっとお月さんに当たって消えたら
背筋がな、ピシャ
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