居酒屋にて/帆場蔵人
なんてそんなもんや
カラス除けのビニールが、パラパラ
畑の夜を叩いて、地面に顔出しとる
キャベツが黙ってこっちをみとった
なぁ、お前らも世間なんてそんなもんや思うやろ
狩られて出荷されて喰われるだけ、ひとつぐらい
俺がもうて何が悪いんや、何しても変わらへん
キャベツの首をひとつ、ふたつ狩り、みっつ目を
手にして顔を上げたときにな、菜の花がみえた
菜の花は綺麗やなぁ、蝶々がようさん、俺も
あんなかの一匹やったかもしれん、いまや
蛾やけどな、一匹逸れて、我をはってな
空を飛べたんはいつの事やったやろなぁ
蛾がぱっとお月さんに当たって消えたら
背筋がな、ピシャ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)