居酒屋にて/帆場蔵人
シャリと伸びてしもたんや
グェ、グェェグェッェェェ、ッ、ッッ……
蛙がないたんか、手から落ちたキャベツが
足を打って俺がないたんか、わからへん
キャベツというキャベツがこっちをみとる
葉に隠された眼、あれは、誰の眼なんや
堪忍や、堪忍やで、堪忍や……
なんやお月さんに叱られとる気がして
もうがむっしゃらに走って逃げたんや
ほんで22円のコロッケ、食べとんや、なぁ
兄さん、悪いことはやっぱりできへんもんやな
ハゲ鷲みたいな爺さんは
ひとのビールを飲み干し
ゲップしてひとの手羽先
骨までしゃぶるしゃぶる
キャベツ食べ放題、
終了のお知らせが貼られ
注文をしてないコロッケが
まぁるい月みたいに置き去られ
齧れば三日月がみえる
揚げすぎたコロッケ食っとんや、水槽の蛙が
げぇぇぇこ、爺さんはいつの間にか、いない
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