詩の日めくり 二〇一六年二月一日─三十一日/田中宏輔
 
熊ちゃん」と呼びかけられる太った男の姿の方がかわいい。いずれにしても、複数のアンソロジーに入るのだから、大したものだ。たしかに傑作だ。ぼくのこんど出した『全行引用詩・五部作・上巻』にも、引用した箇所がある。創元の龍口直太郎の訳の方だけど。岩波文庫を先に読んでたら、小野寺 健の訳の方を引用してたかもね。

 時間とは、すなわち、ぼくのことであり、場所とは、すなわち、ぼくのことであり、出来事とは、すなわち、ぼくのことである。

 本質的なものが失われることなどいっさいない。それが言葉の持つ霊性の一つだ。ぼくが描写した言葉のなかに、その描写した現実の本質がそっくりそのまま含まれているのだ。そうで
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