詩の日めくり 二〇一六年二月一日─三十一日/田中宏輔
ズリーフ作業。楽しい苦しい作業。苦しい楽しい作業。日々の積み重ね。才能も、努力があってこそ発揮されるものなのである。
岩波文庫『20世紀イギリス短篇選』上巻に入っているハクスリーの「ジョコンダの微笑」は、創元推理文庫の『犯罪文革傑作選』では、タイトルが「モナ・リザの微笑」になっていたが、同じものだ。訳者が違って、翻訳の雰囲気がぜんぜん違う。創元のほうを先に読んでいたのだが、岩波のも軽くて好きだ。若い愛人の女が、38歳の男にむかって、「ねえ、小熊ちゃん」と何度も呼びかけるのが岩波のほうの訳で、なんともコミカルである。創元のほうの訳では「ねえ、テディー・ベア」と呼びかけるのだが、「ねえ、小熊ち
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