ひとはみんな少しずつ狂っている/藤原 実
 
『寝ながら学べる構造主義』(内田樹/文春新書)というのがとてもおもしろかったのですが、そのなかのジャック・ラカンの項でラカンの鏡像段階論というのは、こんなふうに読み解かれています。

ヒトのこどもは他の動物にくらべて、ひどく未成熟な状態でこの世に産み落とされます。
幼児はその未発達な神経や感覚系の器官ではじぶんというものを統一的なカラダや内面的イメージとしてとらえることはできません。
この不確かで混沌とした自己像の迷宮のなかで幼児は「原初的不調和」と「寸断された身体」というイメージに苦しめられる。

さてそんな幼児が鏡を見ているうちに、ある日、目の前で動く像が「私」であることにふと気づ
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