詩の日めくり 二〇一五年十二月一日─三十一日/田中宏輔
のに、意識しないと見えないのは、なぜなのだろうか。
じっさいにそうしていなかったことにより、もしもそうしていたならという夢想を生じせしめる。じっさいにそうしていたときよりも、おそらくはここちよい夢想によって。なぜなら、それはその夢想を台無しにする要素が入り込む相手の、彼の意志が入り込む余地がないからである。それは相手の、彼の意志がいっさい介在しないからである。ぼくが思い描くとおりの理想の(これが罠だとぼくは知っているのだが)夢想であるのだから。
ぼくはもう詩を書こうとは思わない。ぼくが書くものがすべて詩になるのだから。
二〇一五年十二月二十三日 「別の現実」
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