詩の日めくり 二〇一五年十二月一日─三十一日/田中宏輔
 
のだが、イマージュは比較対象する複数の事物を必要とはしない。なにものかとべつのなにものか、だれかとべつのだれかを比較検討することで思考は開始され進行される。イマージュは、ただそれそのもの自体を対象として想起すればよいだけである。図形だと補助線をいくつか描き入れるだけで容易に解ける問題が、人間が対象だと容易に補助線が書き込めないために解くことができない。あるいは、不要な補助線だらけで、解けなくなってしまっている。その不要な補助線を取り除いていくと、最後には、思考の対象とするその人間自身も消え去ってしまう。

 長く使っていると、自分がその道具のように考えていることに気がつかなくなってしまう。言葉
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