詩の日めくり 二〇一五年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
記憶というものは偽物だったのである。記憶というもの自身、偽物だったのである。現実をありのまま留めている記憶などというものは、どこにもないのであった。たとえ、写真が存在して、それを目のまえにしても、それを見る記憶は脳が保存している、あるいは、再構成するものであるのだから、そこには、想像の目がつくる偽の視線が生じるのであった。

 そろそろクスリをのんで寝る。身体はボロボロになっていくけれども、まだまだ脳は働いているようだ。より繊細になっているような気がする。より神経質に、と言ったほうがよいかもしれないけれど。おやすみ、グッジョブ!

 齢をとって、身体はガタがきて、ボロボロになり、しじゅう、
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