詩の日めくり 二〇一五年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
う、頭や関節や筋肉や皮膚に痛みがあるけれども、この痛みが、ぼくのこころの目を澄ませているのかもしれない。齢をとって、こころがより繊細になったような気がするのだ。より神経質に、かもしれないけれども。

 睡眠導入剤と精神安定剤をのんで、ゴミを出しに部屋を出たとき、マンションの玄関の扉を開けたときに、その冷たい玄関の重いドアノブに手をかけて押し開いたときに、ふと、そういう思いが去来したのであった。痛み、痛み、痛み。これは苦痛だけれども、恩寵でもある。


二〇一五年十一月二十日 「足に髭のあるひと。髭に足のあるひと。」


足に髭のあるひと。
髭に足のあるひと。


二〇一五年
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