詩の日めくり 二〇一五年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
。どちらの訳も可能ですから、どちらもありうる訳なんでしょうね。きのう地下鉄で見た女性の表情は幽霊に近かったです。パウンドの目にもそう映ったのでしょうか。言葉が豊富な語彙を持っているので、多様な訳というのがあるのでしょうね。このことは翻訳のさいには逃れられないことであると同時に、文化を豊かにするものでもあると思っています。たくさんのひとの同じ原作の英詩の訳が読んでて楽しい(ときには腹立たしい)理由でもあります。イメージがはっきりしてそうで、じつはそうでないかもという気もしてきました。というのも、パウンドが見た顔が、どんな顔たちだったかはっきりしないからです。こうして、顔のところはわかりませんが、花の
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