詩の日めくり 二〇一五年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
は存在しない。つまり、あらゆる思考には、きっかけとなるものがあるのだ。たとえば、偶然に目にした辞書の言葉との遭遇であったり、読んでいた本に描かれた事柄とはまったく違ったことを自分の思い出のなかで思い出したものであったりするのだ。きっかけがなく、思考が開始されることはない。なぜなら、人間の脳は、思考対象が存在しなければ、思考できないようにつくられているからである。したがって、遭遇と目撃と記述の3つの要素についてのみ取り上げたが、解析には、その3つの要素で必要十分なのである。

 そうだ。詩が書くので、太陽が輝くことができるのだし、詩が書くので、雨が降ることができるのだし、詩が書くので、川は流れる
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