詩の日めくり 二〇一五年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
れることができるのだし、詩が書くので、ぼくが恋人と出合うことができたのだし、詩が書くので、ぼくは恋人と別れることができたのだ。

 そうだ。詩が書くので、ぼくたちは生まれることができるのだし、詩が書くので、ぼくたちは死ぬこともできるのだ。もしも、詩が書くことがなければ、ぼくたちは生まれることもできないし、詩が書かなければ、ぼくたちは死ぬこともできないのだ。

 こんなに単純なことがわかるのに、ぼくは54歳にならなければならなかった。あるいは、54歳という年齢が、ぼくにこの単純なことをわからせたのだろうか。たぶん、そうだ。単純なことに気がつかなければならなかった。気がつかなければならないのは
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