詩の日めくり 二〇一五年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
を見ながらコーヒーを飲んでた。朝だった。流れる川と、小さな黒い点々がちらつく川岸。ってことは、朝までいっしょにいたんだ。ここまで思い出した。

 名前が思い出せない作曲家の子と付き合ってたことがあって、その子の頬が赤かったことは憶えてる。大坂の子の頬も赤かった。ぼくは若かったから、なんか、その頬の赤い色って、田舎者って感じがして、ちょっとばかにしてた。いまなら、その赤い頬を見て、健康的で、かわいいなって思うんだろうけれど。ああ、小倉●●くんだ。その作曲家の子の名前、4、5年も付き合ったのに、名前を忘れてた。お金持ちで、ぼくが別れたいって言ったとき、いろいろなものをくれるって言ってたけれど、ぼく
[次のページ]
戻る   Point(16)