詩の日めくり 二〇一五年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
れるほどのものではないかな。そうでもないか。なにしろ、いまでは、もう夜が、ぼくのものではないということの意味のひとつを書いたのだから。


二〇一五年十一月二十六日 「ぼくは画家になりたかった。」


 お昼を買いに行く。トマト鍋をつくろうと思ったけれど、フランスパンとチーズとサラダとミルクにしようと思う。『ジェニーの肖像』に出てくる貧しい画家の食事だ。というか、フランス・ロマン派の作家が描く貧しい詩人や画家の食事である。ぼくのあこがれでもある。ぼくはいちばん画家になりたかった。ジャック・フィニイはフランスの作家ではないけれど。そいえば、O・ヘンリーの作品に出てくる貧しい建築設計家の食
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