詩の日めくり 二〇一五年十月一日─三十一日/田中宏輔
 
ス ナボコフ』収録ヴァージョン335ページ)

「いやいや」〔と足を組みかえ、何か意見を開陳しようとする際にいつもそうするように肘掛(ひじかけ)椅子(いす)をかすかに揺らしながら、シェイドが言った〕。「全然似ていないよ。ニュース映画で王を見たことがあるが、全然似ていないよ。類似は差異の影なんだよ。異なった人びとは異なった類似や似かよった差異をよく見つけるものなんだよ」 (ナボコフ『青白い炎』註釈、富士川義之訳、岩波文庫収録ヴァージョン、483ページ)

 岩波文庫収録ヴァージョンで、肘掛椅子にルビを入れてるところが欠点であるが、送り仮名と、「よく」という副詞の導入は成功している
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