詩の日めくり 二〇一五年十月一日─三十一日/田中宏輔
けれど、翻訳なさった富士川義之さん、きっちりした方なんだろうなって思った。岩波文庫に入ってたほうの訳文は100%の完成度をもっていた訳文だったもの。
さいしょの訳文と、岩波文庫に入ったものの訳文を書き写してみるね。
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「いやいや」〔と足を組みかえ、何か意見を開陳しようとする際にいつもそうするように肘掛椅子をかすかに揺らしながら、シェイドが言った〕「全然似ていないよ。ニュース映画で王を見たことがあるが、全然似ていないよ。類似は差異の影なんだよ。異った人びとは異った類似や似かよった差異を見つけるものなんだよ」
(ナボコフ『青白い炎』註釈、富士川義之訳、筑摩世界文學大系81『ボルヘス
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