詩の日めくり 二〇一五年十月一日─三十一日/田中宏輔
「ぼく」という言葉を、「ぼく」自身に投げつけて、「ぼく」と書いていることがある。「ぼく」は、どこからどこまでも、「ぼく」でないものからできているような気がする。
「ぼく」の複数形が「ぼくぼく」なら、こどものときに、しょっちゅう口にしていたような気がする。連続して口にされる「ぼく」は複数形だったのだ。
つねにどこかに出かけて動き回っている「ぼく」と、ずっと動かないで静止している「ぼく」がいる。「ぼく」は運動しつつ静止している。「ぼく」は静止しつつ運動している。
「ぼく」を逆に綴ると、「くぼ」になる。「でこ」と「ぼこ」のようなものかもしれない。いや、「ぼこ」と「でこ」か。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)