詩の日めくり 二〇一五年十月一日─三十一日/田中宏輔
 



二〇一五年十月十二日 「「ぼく」という言葉でできたレゴ。」


 レゴ。「ぼく」という言葉でできたレゴ。いっしょうけんめい、たくさんの「ぼく」と「ぼく」を組み合わせてつくる。

「ぼく」の部屋。「ぼく」の本。「ぼく」の携帯。「ぼく」のカバン。「ぼく」のペン。「ぼく」の。「ぼく」の。「ぼく」の。まるで、「ぼく」のほうが、ものたちに所有されているかのようだ。いや、じっさい、そうなのだろう。

「ぼく」を伸ばして口にすると、「虚空」と聞こえる。

「ぼく」を極端に短く口にすると「虚無」となる。


二〇一五年十月十三日 「翻訳者魂」


 いま、学校でも、塾でも、
[次のページ]
戻る   Point(15)